こんにちは!代表取締役 兼 AIサービス開発室の鈴木生雄です。ポッドキャストを更新しました。
今週から毎週木曜日にまとめて配信していたのを随時配信に切り替えることにしました。なぜなら、Spotifyの再生数をみると同時に配信しているエピソードのうち新しいエピソード5本に比べて、6本目以降が明らかに少ないことに気づいたからです。はっきりとしたことはわからないのですが、聴いてくれている方のアプリが最新5件を表示したり自動でダウンロードする仕組みになっていたりするのかなと推察しているところです。元々は自分用に始めたこのPodcastですが、せっかくなら多くの方に聴いていただきたいのでこのようにしました。リスナーにとっても鮮度の高い情報が聴けるので都合がよいと思っていただけるのではないかと思っています。
今後とも「名古屋ではたらく社長のITニュースポッドキャスト」をよろしくお願いします。
注目ニュース
Linux 様、35歳の誕生日おめでとうございます!
2026年8月25日、オープンソースのオペレーティングシステムであるLinuxが誕生から35周年を迎えました。
すべては1991年8月25日、当時21歳だったフィンランドの学生リーナス・トーバルズが、ニュースグループ「comp.os.minix」上で、自ら開発していたOSについて投稿したことから始まりました。その中でトーバルズは、「ただの趣味であり、GNUのように大きくプロフェッショナルなものにはならない」と控えめに説明しています。しかし、その「趣味」で始まったプロジェクトは、35年後、世界のコンピューティングを支える巨大な基盤へと成長しました。最初期のLinuxカーネルのソースコードは約1万行でしたが、2026年に開発されたLinux 7.2のソースツリーは、コメントや空行などを含めると約4,390万行に達しています。今では世界中の開発者が参加する、巨大なオープンソース・コラボレーションの結晶となっています。
なお、以下のリンクから、リーナス・トーバルズ氏が実際にニュースグループへ投稿した文章を読むことができます。
Linus Torvalds’ original announcement on Usenet
現在、Linuxは世界で最も広範に利用されているOS基盤の一つです。Linuxカーネルを採用するAndroidを搭載した数十億台のスマートフォンから、TOP500にランクインする世界最高性能クラスのスーパーコンピュータ、さらには国際宇宙ステーションまで、実にさまざまな場所でLinuxが使われています。最近ではテクノロジー業界の関心が生成AIに集中していますが、その世界でもLinuxは欠かせないインフラとなっています。
OpenAI、Anthropic、Google DeepMind、MetaなどのフロンティアモデルプロバイダーがAIモデルの学習・推論に使用する大規模な計算クラスタでは、Linux系OSをホストOSとして利用することが事実上の標準となっています。その一端は、OpenAIが現在公開している「Software Engineer, Compute Foundations Systems」という求人情報からもうかがえます。フロンティアモデルを学習する巨大GPUクラスタを支えるチームの仕事について、次のように記されています。
That means building and maintaining the software closest to the machine: Linux and Ubuntu operating-system images, kernels and modules, drivers, packages and repositories, disks and boot configuration, firmware integration, provisioning, and system-level validation.
Software Engineer, Compute Foundations Systems
つまり35年前、個人の「ただの趣味」として始まったLinuxは、現在ではスマートフォンからスーパーコンピュータ、そして最先端のAIモデルを生み出す巨大計算基盤に至るまで、現代社会の至るところを支える存在になったわけです。
もちろん私自身も、日頃から直接的・間接的にLinuxには大変お世話になっています。35年前にLinuxを生み出したリーナス・トーバルズ氏に敬意を表すとともに、その後35年間にわたりLinuxを育て続けてきた世界中の開発者の皆さんにも感謝し、Linux様の35歳の誕生日をお祝いしたいと思います。
Linux様、35歳の誕生日おめでとうございます!
対象エピソード
- Ep.1455 Linux誕生から35年──「ただの趣味」が世界のAIインフラを制覇するまで(2026年8月26日配信)
Perplexity「Portable Computer」とApple「M6/M5 Ultra」に見るローカルAIエージェントの未来
2026年8月25日、AI検索エンジンを提供するPerplexity AIが、ローカル環境を中心に動作する自律型AIエージェント「Portable Computer」を発表しました。これまでの高性能なAIエージェントは、クラウド上で動作する巨大なフロンティアモデルへの依存度が高く、機密性の高い社内データやプライベートなソースコードを扱う際のセキュリティやプライバシー、さらに大量のトークン消費に伴う推論コストなどが課題となっていました。PerplexityがNVIDIAのハードウェア向けに最適化したPortable Computerでは、モデルやエージェントのハーネス、会話履歴、実行履歴などをデフォルトでユーザーのローカルマシン上に置きます。Web検索や外部サービスとの連携、より高性能なクラウドモデルが必要になった場合に限って、ユーザーの許可のもとで外部サービスを利用する「local-first」のアーキテクチャを採用しています。
また同じ日にAppleは、新型プロセッサ「M6」と「M5 Ultra」を発表し、それぞれを搭載したMac miniとMac Studioの刷新を明らかにしました。今回のアップデートで特に興味深いのは、Appleが単なる処理性能の向上ではなく、ローカルAIを製品の主要な用途として明確に打ち出していることです。Appleは新しいMac miniを「always-on agentic computing」のためのデスクトップとして位置付け、新しいMac Studioでは最大512GBのユニファイドメモリを搭載することで、大規模なAIモデルを端末上で動作させることを訴求しています。
つまりPerplexityとAppleが同じ日に提示したのは、いずれも「AIエージェントをクラウドだけで動かすのではなく、ユーザーの手元にあるコンピュータで常時稼働させる」という未来像です。
私は、Perplexity・NVIDIA陣営とAppleがこうした方向性を強く打ち出してきたことを、戦略的な観点から非常に興味深く見ています。なぜなら、これはフロンティアモデルプロバイダーやハイパースケーラーが推し進めてきた、巨大なAIデータセンターへ計算資源を集中させるアプローチとは、ある意味で逆方向だからです。
計算資源の利用効率だけを考えれば、本来はクラウドへの集中には大きな合理性があります。待ち行列理論で考えてみます。複数の窓口それぞれに別々の行列を作るよりも、一つの行列から空いた窓口へ順番に客を送り込んだ方が、窓口の稼働率を高め、待ち時間を短くできます。
AIの計算資源でも同じです。大量のユーザーの需要を巨大なデータセンターに集約すれば、あるユーザーが計算資源を使っていない瞬間に、別のユーザーがその資源を利用できます。さらに大規模になるほど需要のばらつきを吸収しやすくなり、GPUなどの高価な計算資源を効率的に稼働させることができます。その意味では、増え続けるAI需要を社会全体として効率よく処理するのであれば、クラウド型の方が理にかなっています。
ところが、計算資源を「売る側」から見ると、事情は少し変わります。各ユーザーがAIエージェントを動かすためのコンピュータをそれぞれ所有すれば、その計算資源が使われていない時間も当然発生します。クラウドで共有するより設備利用率は下がるかもしれません。しかしその分、社会全体に設置される計算資源の総量は増える可能性があります。クラウドなら10万人のユーザーを数千台のGPUで処理できるところを、それぞれのユーザーがローカルAIのためのGPUや高性能なSoCを所有するようになれば、ハードウェアメーカーにとっての市場は大きく広がります。
こう考えると、AppleがローカルAIを強く推し出す理由は非常にわかりやすいでしょう。Appleは巨大なクラウドAI計算資源そのものを販売している企業ではありません。ユーザーの手元にあるMacの計算能力が重要になればなるほど、Macというハードウェアそのものの価値が高まります。AIエージェントの普及によって、「高性能なMacを24時間動かしておく」という新しい需要まで生まれる可能性があります。
Perplexityにも同様のインセンティブがあります。ローカルモデルで処理できる仕事が増えれば、外部のフロンティアモデルAPIに支払う推論コストを抑えられるだけでなく、「機密データを外部に出したくない」という企業ユーザーにもサービスを広げやすくなります。
そしてNVIDIAにとっても、この流れには大きな意味があります。現在、GoogleはTPU、AWSはTrainium、MicrosoftはMaiaといった独自AIチップを拡大しています。NVIDIAにとって最大級の顧客であるハイパースケーラー自身が、同時にNVIDIAへの依存を減らそうとしているわけです。その状況を考えれば、AI計算需要を巨大なデータセンターだけに集中させるのではなく、企業や開発者、さらには個人のデスクサイドにまで広げることには戦略的な合理性があります。NVIDIAにとっては、GPUの需要先を少数の巨大クラウド企業だけに依存せず、より広い顧客層へ分散できるからです。一方、Google、Amazon、Microsoftなどのハイパースケーラーにとっては、AI計算需要がクラウドに集約されるほど、自社のデータセンターや独自AIチップの利用を増やすことができます。
そう考えると、現在起きている「クラウドAI対ローカルAI」という動きは、単なる技術方式の違いではありません。AIの計算資源をどこに置くのか。そして、その計算資源を誰が所有し、誰が課金し、誰が利益を得るのか。ローカルAIエージェントをめぐる競争の背後には、AI時代のコンピューティング資源を巡る、こうした巨大な産業構造の争いがあるように思います。
対象エピソード
- Ep.1458 Perplexityが放つ「Portable Computer」──NVIDIAと組んで切り拓くローカルAIエージェントの衝撃(2026年8月26日配信)
- Ep.1454 Apple、オンデバイスAIの極北へ──「M6」「M5 Ultra」が切り拓くローカルエージェントの時代(2026年8月26日配信)
ラインナップ
- Ep.1463 ビル・ゲイツが鳴らす警鐘──AIがもたらす“激動の時代”と人類の選択(2026年8月27日配信)
- Ep.1462 Z.ai「GLM-5.3-Flash」の衝撃──ハイブリッドアーキテクチャが引き起こすマルチモーダルAIの価格破壊(2026年8月27日配信)
- Ep.1461 Google「Gemini 3.5 Transcribe」を発表──“ただの文字起こし”を過去にする次世代音声認識(2026年8月27日配信)
- Ep.1460 Meta、州司法長官と最大180億ドルで歴史的和解──SNS業界全体に波及する「ティーン保護」の新たな基準(2026年8月27日配信)
- Ep.1459 Alibabaの次なる一手──「Qwen3.8-Flash-Next」が予告するQwen4アーキテクチャの全貌(2026年8月26日配信)
- Ep.1458 Perplexityが放つ「Portable Computer」──NVIDIAと組んで切り拓くローカルAIエージェントの衝撃(2026年8月26日配信)
- Ep.1457 NVIDIA、次世代エッジAI「Jetson Orin Nano 2」を発表──ロボティクスとフィジカルAIを加速するエントリー基盤(2026年8月26日配信)
- Ep.1456 Intel「Crescent Island」の全貌──HBMを捨てLPDDR5Xで挑む推論インフラ市場(2026年8月26日配信)
- Ep.1455 Linux誕生から35年──「ただの趣味」が世界のAIインフラを制覇するまで(2026年8月26日配信)
- Ep.1454 Apple、オンデバイスAIの極北へ──「M6」「M5 Ultra」が切り拓くローカルエージェントの時代(2026年8月26日配信)
- Ep.1453 NVIDIAが放つ推論の切り札──Agentic AIを加速する「Groq 3 LPX」フル生産へ(2026年8月25日配信)
- Ep.1452 SpaceXAIがNVIDIA Vera CPUを大規模導入──エージェントAIの主戦場は宇宙へ(2026年8月25日配信)
- Ep.1451 Mistral、サウジHumainと数億ユーロの提携──中東における「ソブリンAI」戦略の加速(2026年8月25日配信)
- Ep.1450 Anthropic、最先端AI「Claude Mythos 5」のサイバー防衛機能を一般開放──セキュアなエコシステム構築へ舵を切る(2026年8月24日配信)
- Ep.1449 巨大AIを個人PCで動かす革新──エッジネイティブ推論システム「FreeToken」の衝撃(2026年8月24日配信)
- Ep.1448 中国の人型ロボットが100m走で人類最速超え──「天工」が示す身体的AIの急進化(2026年8月24日配信)
- Ep.1447 NVIDIAの自律型エージェント「AVO」がARC-AGI-3で満点達成──“システム設計”が引き出す次世代AIの推論能力(2026年8月24日配信)
